霧峰林家の「宮保第(きゅうほうてい)」は、清代の一品官邸を代表する建築であり、全体の構成は「五進十一開間(ごしんじゅういちかいけん)」という壮麗な形式を持っています。
そのうちの「第一進(だいいっしん)」は邸宅の最前部に位置し、建築群全体の正門および玄関広間にあたります。
この部分は、林朝棟(りん・ちょうとう)によって清の同治9年(1870年)から光緒9年(1883年)にかけて増築されました。
「第一進」は邸内に入る最初の正式な空間であり、官邸としての威厳と迎賓の礼制を象徴する建築です。
構成と用途:
第一進は来客を迎える玄関および門廳の役割を果たし、邸宅の「顔」となる部分です。正面には中庭が広がり、左右には対称的に**護龍(ごりゅう)**と呼ばれる棟が配されています。
建築の特徴:
赤レンガの壁、木彫の梁飾り、格子窓の装飾、屋根の剪黏(せんねん)細工、石彫など、繊細な職人技を見ることができます。
象徴的な意味:
入口の上には「宮保第」と刻まれた扁額(へんがく)が掲げられています。これは主人がかつて一品官の位にあったことを示し、その高い社会的地位を象徴しています。
視覚的効果:
第一進から奥を望むと、第二進・第三進と建物が順に並び、中軸線の奥行きと連続性が強調される構図となっています。
